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HOUSE IN ZENPUKUJI
善福寺の家
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建築の完成形≠竣工直後
竣工後、生活が始まり住み手がしつらえるものによって建築の強度が失われることがある。このようなことが無いように、予てから住宅を考える場合、建築の完成形を竣工直後とせず、しつらえのレベルまでコミットすべきでないかと考えていた。
改修した建物は吹抜けのリビングと全館空調システムを持つ木造2階建の建売住宅である。施主は子供の独立を機に、この家で一人住まいだった母と同居しようと考えた。与条件は、高齢の母の生活を1階で完結させ且つバリアフリーとすること、明るい玄関にすること、持込む古家具が馴染む内装にすることの3つであった。アーチ壁と持込み家具がつくる「透明性」
先にプラン=部屋があり、その壁面を持込む家具で埋めていくことによって建築的強度が失われるようなつくり方はしなくないと思った。全館空調システムが建具の無い、アーチ開口による層状の空間構成を可能にした。建築を構成する要素は持込み家具を加え、既存の建具造作と階段、新設アーチ壁、新設家具の4つに大別されるが、このときアーチ壁と持込み家具は相互補完関係にある。アーチ壁は家具の背景であると同時に別の家具を切り取るフレームにもなっている。各々のアーチ開口の大きさとその位置は、背後に広がる空間と手前にしつらえる家具の大きさによって慎重に決められ、向こう側に広がる空間を暗示させる。これら東西軸の「知覚的透明性」は、玄関からデッキテラスへ続く南北軸の「文字通りの透明性」と対になって、空間の奥行きや広がりを感じさせる。両者は施主2人の身体的、精神的バリアフリーと明るい玄関を実現させた。「消去」あるいは「対比と見立て」
建築は空間的な広がりと共に時間的な広がりを受け止められる器でなければならない。
そのままではキッチュに見える既存の階段やその手摺は白く塗り潰し、新設する手摺と対比的に見せることによって「ほんもの」と見立てた。既存の建具造作の内、アンバー色のアルミサッシは塩ビシートで、その木枠も白くすることによって、その存在を消去し、それらと対比的に、その他の日焼けした建具や木枠を「ほんもの」と見立てた。和室の障子はそのまま残すと、組合せとしてキッチュに見えるため、白く塗り潰し、その記号性を消去しつつ光だけを取り出した。新設家具はアーチ壁と拮抗しないように、必ず天井や床と縁を切り、ボイドを内包させてモノを飾れるようにし、その存在を控えめなものにした。あらゆる取手には金物を使用せず、その存在を消去、どうしても外から持ち込まなければならないガラス扉の取手や洗面カウンターは古道具を加工した。善福寺の家- 所在地:東京都杉並区
- 建物用途:住宅
- 構造規模:木造
- 建築面積:76.79㎡
- 延床面積:126.24㎡
- 竣工:2008/08