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SYUGOIN
朱合院
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無秩序なゲーティッド・シティ
日本の都市は概ね、自由に立ち入ることが出来ない私有地と私有建物による街区と道路で出来ている。公共性を求められるはずの街路は、自由が効かない官有の道路を底にして、その両側は互いに無秩序な私有のファサードが連なり、その表面にはしばしばプライベートが露出する。一方プライベート側にしてみれば、窓から良好な街並を望むことは難しく、プライベートが侵されることすらある。このような公私の不調和やそれによる生活の不活性は、多くの建築物がその境界面としての調整機能を果たしていないことによるものであり、生き生きとした都市生活は期待出来ない。敷地は幹線道路である井の頭通りと商店街である末広通りに挟まれた、まるで川の流れを阻む中州のような全長108mにも及ぶ街区にある。朱合院では新たな境界面によって公私を活性化しようとする動的な姿勢と、公共であろうとする静的な姿勢の2つの異なる次元で公私の関係調整を図っている。通り抜け通路のダイバーシティ/公共としてのファサード
建ぺい率の最大限度80%で建築し、残りの20%はコモンとしてではなく、長い街区によって分断された南北の街を結びつける通り抜け通路として開放させた。住宅のエントランスは2面接道であることを利用して2つに分け、4棟に分かれた住戸を2つの階段だけで繋ぐことで天空を確保、通り抜け通路を下階の店舗と上階の住宅で共有できるようにした。不特定多数の人が自由に行き来する通り抜け通路は、階段やバルコニーが立体的に掛けられることで通過する人/店舗に訪れる人/店舗で働く人/住宅に出入りする途中の人/バルコニーに佇む住人等、多様な人々がすれ違う選択の自由と出会うダイナミズムが同時に生まれる。
南北のファサードでは住宅の開口部と壁面が、その機能の別を超えて単なる粒子の粗密として表現されるように、それぞれ煉瓦の透かし積みと煉瓦の馬目地密着張りにした。結果、街路に対してプライベートが露出することのない壁面にぽっかり開いた穴だけが、隣り合う道に抜けられることを示唆してくれる。カオスからゆらぎを取り出す
外部におけるこのような関係調整は内部においてもその効果を発揮してくれる。各室の互いに異なる間取りは、連続する階段の都合で決められた玄関位置や通り抜け通路を挟んですれ違う開口部により、ほぼオートマティックに決められるが、各室とも街路に向いた煉瓦透かし積み+アルミサッシ、通り抜け通路に向いた木製サッシという性格の異なる2種類の開口を持つ。前者はカオスとしての街並を遮断しつつ、木漏れ日の心地良いゆらぎにも似たドット状の光だけを通過させてくれる。開口部に近づけば街並を眺めることも出来るし、遠ざかればその光と影だけが見えてくる。一方後者の周りとその先には漆喰壁、窯変煉瓦とその粗い目地、メッキされた金属手摺やカーテンパイプが見えてくる。何れもその製造過程や製作過程における諸条件の誤差によって仕上げに心地良いゆらぎが見られるものを選択した。真の公共性
無秩序な街並に見られるように、個人の私利私欲が集合した結果、むしろ個人の私利私欲を阻害してしまうこともある。朱合院は私有建物であるが、私の快適性を追求しつつも、それが集合した時にもそれが損なわれないように計画した。
建築の境界面の操作によって、住まい手や利用者は当然のこと、街路を行き交う人や車などあらゆる関係性を整理した建築はいずれ街に定着する。良質な個人が集合した時、そこに真の公共性は生まれる。朱合院- 所在地:東京都武蔵野市
- 建物用途:集合住宅
- 構造規模:RC造
- 建築面積:146.09㎡
- 延床面積:514.56㎡
- 竣工:2013/12